新型コロナウイルスの都市部での感染者数が増加しています。
感染が蔓延期に入ったと思われるこの時期。
もはや感染源や感染経路を追うことは不可能に近いと思われます。
感染元を潰すことが不可能な段階まできてしまった今、個人での自衛策が必要になります。
単純に外に出ないという策を取れば、感染するリスクから逃れられます。
しかし、新型コロナウイルスが収束するまで、自宅から全く出ないというわけにも行きません。
会社や学校に行かなかったとしても、生活するためには、最低限の外出が必要となります。
外出したのであれば、マスクを着用し、こまめな手洗いとうがいが必要です。
帰宅して手洗いうがいを行い、ウイルスを洗い流したと思った方。
スマホに付着したウイルスが、まだ生き続けていることにお気づきでしょうか?
今回は見落としがちな、スマホについた新型コロナウイルスの感染についてお話します。
新型コロナウイルスが感染が発生するパターン
新型コロナウイルスは飛沫感染と接触感染でううると言われています。
飛沫感染
飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみから出るつばなどに付着したウイルスを、未感染者が吸い込み、体内に侵入することで、感染します。
一般的にその飛沫の大きさは直径5㎛以上であり、サージカルマスクで予防することができます。
ウイルスの大きさとマスクに関しては、詳しく書いた過去記事を参考にしてください。
飛沫感染では、人との距離が約1m以内の濃厚接触で感染する可能性があります。
なぜ政府や自治体が2m以上離れろというのかは、この飛沫が2m以上であれば飛ばずに落下するためなのです。
また2m以上離れれば、乾燥して感染性がなくなるためでもあります。
しかしこの飛沫粒子の中でも、エアロゾルと言われる空気中で霧のように浮遊できる微小な粒子は、湿気のある密室では数分から30分程度は感染性を保持してしまいます。
今回、ライブハウスやスポーツジム、クルーズ船ダイヤモンドプリンセスなどの、クラスターと言われる感染はこのエアロゾル感染によるものであると考えられています。
接触感染
接触感染は、感染者が咳やくしゃみなどを手でおさえ、その手で電車のつり革やドアの取ってなど様々なところを触ります。
そして未感染者がそのウイルスが付着している部分に触れることで、ウイルスの移動が発生します。
そのウイルスがついた手から、未感染者の口や鼻、目から体内にウイルスが侵入することで、感染が成立してしまうことを言います。
そのウイルスが生存している期間は、プラスチックやステンレスでは3日以上、段ボール紙では1日以上と言われています。
感染箇所としては、エスカレーターの手すり、エレベーターの階ボタンなど、挙げればきりがありません。
その中でも、現代人が1日のうちで触れている時間が多いものがスマホです。
スマホに触る時間は増えている
MMD研究所が発表したスマートフォンを所有する15歳~59歳の男女を対象に実施した「2019年版:スマートフォン利用者実態調査」の結果によると
- 男性の10代で「3時間以上4時間未満」
- 男性の20~30代で「2時間以上3時間未満」
- 女性の10~30代で「3時間以上4時間未満」
- 女性の40代~50代で「2時間以上3時間未満」
となっています。
スマホを多く使う年代の10代~40代に至るまで、毎日2時間~4時間もの時間、スマホに触れていることがわかります。
中には「10時間以上」と答えた10代女性も1割を超えました。
昨今は新型コロナウイルスの影響で、スマホに触れる時間は 更に多くなっていることが予想されます。
新型コロナウイルスに関する情報、休校による知人とのSNS、外出を控えて自宅にいることが多くなり、動画を見る、テレワークによる情報共有や連絡など。
しかもスマホは自宅だけではなく、電車内、会社、お店の他、信号待ちや歩いている間でさえ、触れているのです。
中にはトイレでもスマホに触れる人もいるでしょう。
しかも何より怖いのは、食事中でもスマホに触れていることです。
スマホの画面上で生き続ける新型コロナウイルス
あなたの今この瞬間までの行動を思い出してみてください。
今日は何回スマホに触れましたか?
駅や電車の中、車内やコンビニなどのお店、外出中のあらゆる場所でスマホに触れているでしょう。
そのあと帰宅して、手洗いはしましたか?
この時期は、いつにも増して手洗いをこまめにしていることでしょう。
では、手洗いと同時にスマホを消毒しましたか?
これには多くの人が「していない」と答えるでしょう。
不特定多数の人がいる場所から自宅に戻ったとき、手洗いのあとに、ほとんどの人がスマホチェックをします。
手洗いを行い、せっかくウイルスを洗い流したその手は、スマホを触ることで再びウイルスが付着してしまうのです。
スマホの画面上では、新型コロナウイルスが3日以上生き続けているのです。
例え、今日は外出していなくても、3日前に外出していれば、あのときのウイルスは、今でもあなたのスマホの画面で生き続けています。
今、思わずスマホを除菌シートで拭きたい衝動に駆られませんでしたか?
それぐらいの危機意識を持っていいのです。
また、食事中のスマホは大変危険です。
いくら食事前に手洗いうがいを行ったとしても、スマホを触れば、たちまち手にウイルスが付着します。
スマホの消毒には注意が必要
本来、スマホの汚れを落とすには、「専用のクロスで拭く」とされています。
しかし昨今の新型コロナウイルスの影響を受け、一部のメーカーでは特定の条件の元であれば、殺菌効果のあるアルコールシートで拭くという見解も発表されています。
Apple社は2020年3月10日「iphoneのお手入れに消毒剤を使っても大丈夫ですか?」という専用ページを設けました。
iPhone のお手入れに消毒剤を使っても大丈夫ですか?
70%イソプロピルアルコール含有ワイプやクロロックス除菌ワイプ (Clorox Disinfecting Wipes) を使い、iPhone の外表面を優しく拭き取る分にはかまいません。漂白剤 (ブリーチ) は使わないでください。開口部に湿気や水分が入り込まないようにご注意ください。また、洗剤類の中に iPhone を浸さないでください。
Apple 公式HPより
また、京セラも「京セラ製携帯電話・スマートフォンのお手入れのしかた」をHPで公開しました。
アルコールを使用する場合
1.ケーブル類をすべて取り外して、製品の電源を切ります。
KYOCERA JAPAN公式HPより
2.糸くずの出ない柔らかい布にイソプロピルアルコール(99.7%以下)、エタノール(99.5%以下)を少量含ませ、本体を拭き取ります。
スマホは精密機械なので、消毒用アルコール含有シートを使用したことにより、コーティングの剥離や端子の劣化、開口部に湿気や水分が入り込むことで壊れてしまう可能性が考えられます。
取り扱いには十分に注意が必要です。
まとめ
接触感染は、飛沫感染やエアロゾル感染に比べると、発症率は低いです。
しかし接触感染は、飛沫感染やエアロゾル感染に比べて、自粛することが難しいのです。
エレベーターのボタンを押さないわけにもいかないし、自動ドアをタッチしないわけにもいかない。
また接触感染は、その頻度も高く、日常生活上触れざるをえないものもあり、その多くが無自覚で行ってしまうものもあります。
なので、接触感染によるある程度の発症はあると考えられています。
重要なのは、とにかく手を洗い、手に付着するウイルスを最小限にとどめることなのです。
物を触った直後に、毎回手を洗うことは難しいので、感染をゼロにすることはできません。
しかし、1日のうちで最も多く触れるものであるスマホが、ウイルスの温床であることは間違いなく、このリスクを少しでも低くすることは感染予防に効果的です。
今後、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出や人が密集する場所に行かない、咳エチケットなど様々な対策が推奨されています。
見落としがちですが、実は私たちの一番近くにある存在であるスマホの消毒にも気をつけてみましょう。
参考文献
白木公康 (千里金蘭大学副学長,富山大学名誉教授(医学部)、木場隼人 (金沢大学附属病院呼吸器内科)「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察」
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278
ロイター通信 2020年3月18日「新型コロナ、空中で数時間生存 米研究所が警告」
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-study-idJPKBN214400
MMD研究所株式会社コロプラが提供するスマートフォン向けインターネットリサーチサービス「スマートアンサー」 「2019年版:スマートフォン利用者実態調査」
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1844.html
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