万が一、あなたが心肺蘇生を行うことになった場合。
救急車が到着するまで、あなたは胸骨圧迫の手を止めてはいけません。
過去の記事「テニスボール1つで命を救う?~胸骨圧迫の練習はどこでもできる!~」でも書きましたが、119番通報をしてから、救急車到着までの時間は全国平均で8.6分です。
この時間をあなたは「長い」と感じますか?「短い」と感じますか?
試しに、過去の記事で書いたようにテニスボールで8.6分間、胸骨圧迫を続けてみてください。
多くの人は、「長い」と感じます。
そして「しんどい」とおっしゃいます。
無理もありません。
胸骨圧迫中の姿勢というのは、膝をつき、ひじを伸ばした状態で行います。
自分の体重の何十kgが、両膝と重ねた手の3点にかかります。
またその状態で、上下運動を続けなければなりません。
膝をついている地面が、部屋の中のような柔らかい面なら、まだ負担は少ないです。
しかし心肺蘇生は、いつどこで行うかわかりません。
真夏の灼熱のコンクリートの道路や、砂利道。
雨に濡れた滑りやすいタイルや、薄っすら雪が積もる歩道かもしれません。
どんな状況でも胸骨圧迫をやめるわけにはいきません。
いえ、やめられないはずなのです。
目の前には、消えそうな命は、あなたの手にかかっているのですから。
そんなときは、必ず「周りの人間に協力してもらう」ことが必須です。
一人一人の負担を減らすために、その場にいる人で交代しながら胸骨圧迫を続けます。
「では、胸骨圧迫をする人の順番を決めます。」
「じゃ、私1番にする。」
「俺、2番にするね。」
「僕、3番。」
「では、並んで下さい!」
そんなやり取りをする人はいないですよね。
そんな順番のやり取りをする間にも、時間は刻一刻と過ぎていき、死亡率がどんどん上がっていきます。
誰が何番目でもいいのです。
目を見て、大きな声で協力して胸骨圧迫を絶え間なく続けることが重要なのです。
「俺、交代します!」
胸骨圧迫を続ける人の、圧迫のテンポが遅れてきたのを見たら、積極的に交代してあげてください。
「あなた、交代してください!」
胸骨圧迫を続けることが困難になってきたら、ためらわず交代してください。
救命措置の場面でできることは、胸骨圧迫だけではありません。
砂や土などの汚れを拭いてあげる、要救助者が女性であれば、衣服を整えてあげる。
寒ければ、自分の着てる服やタオルを上からかけてあげる。
野次馬からなるべく見えないようにしたり、あるいはその中から協力者を見つけることもできます。
救助者到着の誘導や、道路上であれば車の誘導など…
胸骨圧迫以外にも行わなければならないことは、たくさんあり、そのすべてが立派な「命を救う行為」なのです。
世界中全てのAEDは、2分間ごとに心電図の解析を行います。
胸骨圧迫を中断してもいいのは、その解析中と電気ショックの間だけです。
それ以外は胸骨圧迫を続けてください。
AEDの電極パッドを貼っている最中でも、胸骨圧迫をやめてはいけません。
救助者が5分で到着することもあれば、10分かかることもあるかもしれません。
胸骨圧迫は、全身を使った非常に大変な作業です。
救助者到着まで、1人でやり続けるには、相当な気力と体力を要します。
だからこそ、積極的な協力が必要であり、誰が何番目かは必要ありません。
救急救命講習での経験があれば、現場で指示を出す立場になるぐらいの積極さでも構いません。
命を助ける場面に遭遇したときは、順番待ちは必要ありません。
こちらの動画は、「令和元年度おおさか元気広場講習会」にて行った、胸骨圧迫の際の交代の仕方について、説明・実践した動画です。
受講者のみなさんが、どのように交代しているかを参考にしてみてください。
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