マスク転売騒動に見る日本人の大量買いの変化

コラム

新型コロナウイルスが日本国民にもたらす影響が、日々深刻化しており、連日、1日を通して報道が続いています。

私も医療に携わる人間として、この問題に関しての情報を常にチェックしています。

この新型コロナウイルスに関連して、日本中で問題になっている「マスク転売騒動」について、今回はお話しようと思います。

マスク転売騒動とは

新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になり、店頭では枚数制限を設けるどころか、都市部では品切れ状態が続いています。

インターネット通販においても、使い捨てマスクとして手頃な価格のマスクは販売されておらず、高機能マスクが、新型肺炎流行前よりも、割高な価格で販売されています。

またメルカリやラクマ、ヤフオクなどのフリマサイトでは、マスク1箱を5万円で販売するなど、信じられないほどの高値で販売されています。

このフリマサイトでの高値販売の裏には、必要以上にマスクを大量に買占め、10倍以上もの価格で転売するという不適切な転売行為によるものであります。

こうした大量買い占めによる高額転売行為は、本当にマスクを必要としている人に、マスクが行き渡らないだけではなく、困っている人の足元を見て金儲けをしようとする、何とも民度の低い行為です。

これに対し、メルカリは2月4日「マスクの取引に関するお願い」として、以下の文を発表しました。

いつもご利用いただきありがとうございます。

昨今、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスクの需要が急激に高まり、日本全国でマスクが品薄状態になっております。

それに伴い、メルカリ上でもマスクの出品数・購入数が増加しております。

マスクは禁止出品物には該当しませんが、利用者の皆さまにおかれましては、社会通念上適切な範囲での出品・購入にご協力をお願いいたします。

また、お客さまのお取引の状況によっては、事務局から入手経路を確認させていただく場合や、商品の削除・利用制限等を行わせていただく場合もございます。

お客さまにメルカリを安心・安全にご利用いただくため、ご理解とご協力をお願いできますと幸いです。

今後ともメルカリをよろしくお願いいたします。

メルカリ

また、続いて2月5日に「ヤフオク!」、2月6日には「ラクマ」が同様に、転売に対する配慮をするよう呼びかける文書を発表しています。

マスク転売はなぜ禁止できないのか

こうした悪質な転売活動に対し、フリマサイトを運営する会社は、マスクを禁止出品物にする意向はなく、あくまでも適切な取引のお願いをするにとどまっています。

では、消費者庁が罰則を設ければよいのではないかと考えますが、これには基本的人権における自由権の1つである「経済的自由権」に紐づいており、残念ながら罰することはできません。

経済的自由権とは

経済的自由権は、職業選択の自由・居住移転の自由・営業の自由・財産権の自由という内容から成り立ちます。

人の経済的な活動は人権として保障されるものであり、国家や権力で干渉することは、自立した個人としての経済活動の基盤をを抑制してしまうことにつながります。

職業選択の自由や居住移転などと共に、他者により束縛や干渉を受けることは、この基本的人権により、保障されているのです。

よって、マスクを転売するという行為に新たに法律を定めたり、国や権力が罰則を設けることはできないというのが現状です。

日本人の大量買占めで思い出すオイルショック

大量買占めというキーワードで思い出すのが、「オイルショック」です。

50代以上の方であれば、子供の頃にテレビや新聞で大きく報道されていたことを覚えていらっしゃるかも知れません。

オイルショックによるトイレットペーパー騒動とは?

1973年に第四次中東戦争により、原油価格が7割もの引き上げを決定したことにより、当時の通産省産業大臣であった中曽根康弘氏が紙製品の節約を呼びかけ、同年10月19日にこれを発表しました。

世間では「紙製品がなくなるのでは」と言った噂が流れ始めたころ、同年11月1日午後1時半ごろ、千里ニュータウンの販売店が特売を知らせるチラシに「紙がなくなる!」と書きました。

販売店側は「(激安で販売することにより)紙がなくなる!」と書いたものであったが、連日の報道や世間の噂に、不安を抱えていた主婦たちは、一斉に店へと走り、あっという間に長蛇の列ができました。

たちまち品切れになった店側に対し客が苦情をつけたために、店側は特売品ではない高級品のトイレットペーパーを販売したが、そのトイレットペーパーでさえも、あっという間に完売しました。

この噂を聞いた新聞社が、高級トイレットペーパーでさえ完売したことを「あっという間に値段が2倍」と記事に書いたため、さらに騒ぎが大きくなってしまいました。

当時は第四次中東戦争による、実際に原油価格は高騰していたため、「紙がなくなったらどうしよう」という不安や、「みんなが当分のトイレットペーパーを先に確保している」という集団心理に陥り、また、マスコミが長蛇の列や空になった商品棚を強調して放送したために、騒動がさらに騒動を呼び、日本全国に拡大しました。

また、主婦が卸売店にて、段ボール箱ごと大量に買い占めたため、一般商店では品不足に陥り、店頭からは実際にトイレットペーパーが消え、初めは楽観視していた人までもが、不安を煽られ、複数店舗を駆け回り、トイレットペーパーの大量買占めを行いました。

しかし、実際当時の日本の紙製品の生産は安定しており、この「紙がなくなる」というデマが広がるまでは、生産量に変化はなく、騒動中は生産量を増加することも可能でした。

この騒動が大きくなったのは、高度経済成長期で大量に物を買い、消費することに慣れてしまっていたことや、マスコミの報道競争による過大報道にあると言われています。

日本人の大量買占め目的の変化

オイルショック時の大量買占めは、あくまでも「自分が(家族が)使う分を確保するため」でした。

しかし、今回の新型コロナウイルスによるマスクの大量買占めは、転売目的であるための購入が多く含まれています。

大量買占めをして高値で転売する人に、その大量のマスクは必要ではありません。

本当にマスクを必要としている人に、適正な価格でマスクを購入することができないのは、日本人の民度の低さを露呈しているようなものです。

オイルショックのその後

オイルショックのその後がどうなったか…

日本国政府として買占めの自粛を呼びかけましたが、あまり効果がなかったために、通産省(現経済産業省)が、11月12日にトイレットペーパー等の紙類4品目に、「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律」に基づき、「特定物資」として指定しました。

また、翌年1974年1月28日には「国民生活安全緊急措置法」の指定品目に追加されたため、標準価格を設定しました。

そして、1974年5月24日、「国民生活安全緊急措置法」の指定品目から、トイレットペーパーなどの紙製品は、解除となりました。

騒動の起こった11月1日から、実に8か月弱もの時間が過ぎていました。

大量買占めに対する一時的な措置を

オイルショックで日本中が騒動になった当時でさえ、政府は、緊急措置として、買占めに対する法律を設けることができました。

また、事態が収束した後は、特定品目から解除するといった柔軟な対応を取ることができたのです。

その教訓を活かし、現在の新型コロナウイルスに乗っ取った悪質な転売を、国が対策を取るべきだと感じております。

フリマサイト側は、法律がない限り販売を中止することはできません。

しかし、国が一時的な措置として、オイルショック時のような法律を設定すれば、大量買占めや、悪質な転売を防止することができると考えております。

まとめ

私は医療に携わる人間として、今回の転売騒動で、マスクの必要性を痛感しております。

医療現場には多くのマスクが必要であり、現在不足しています。

オイルショック時の日本人の「安定した生活を送りたい」という保守的な考えは、「困っている人の足元を見る」という攻撃的な考えに変化してしまいました。

現在店頭から消えたマスクは、一体誰の元で保管され、ネット上でさらされているのでしょうか。

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