新型コロナウイルス感染予防に、嵐やピコ太郎、木村拓哉さんなど、芸能人や各界の著名人が動画投稿サイトに「手洗い動画」を投稿し、話題になっています。
そう言えば子どもの頃には「外から帰ったら手を洗いなさい」って言われていたなぁ
感染予防の手洗いはいつから始まったのだろう?江戸時代?明治時代?昭和には始まってただろうけど…
こんな疑問にお答えします。
嵐の手洗いソングや、ピコ太郎の手洗い動画の再生回数は急上昇していること、手洗い用の石鹸や除菌シートが飛ぶように売れていることからも、人々がいかに手洗いが感染予防に重要なのかがわかります。
今回はその感染予防の手洗いの歴史についてご紹介いたします。
感染予防の手洗いはいつ始まったの?
手洗いの歴史は意外に浅く、約170年前に発見されました。
オーストリアの属国だったハンガリーでの話です。
日本では江戸時代末期の頃です。
感染予防の手洗いの発見者は誰?
感染予防の手洗いを最初に発見したのは、ゼンメルワイス・イグナーツです。
ゼンメルワイスはハンガリーの産科医です。
消毒法のパイオニアとして世界中に知られ、「母親たちの救い主」「手洗いの父」とも呼ばれています。
ウィーン大学で法律を学び始めましたが、医学部に転部しました。
しかし希望していた内科医にはなれず、産科医になりました。
手洗い予防の起源
妊婦の死亡率の差異
ゼンメルワイスがウィーン総合病院で勤務していた頃の話です。
ウィーン総合病院には、第1産科と第2産科がありました。
2つの産科の死亡率の違いは
- 第1産科:10%以上
- 第2産科:4%未満
今でこそ、それが細菌の感染によるものだとわかっていますが、170年前ではわからなかったのです。
ゼンメルワイスは2つの産科の違いを、宗教的な観点も含め見つけ出そうと必死になりました。
そこでゼンメルワイスが発見したのは、働いている人間が違うということでした。
- 第1産科は研修医
- 第2産科は専門の産科医
大きな進展となった友の死
ゼンメルワイスの友人の病理学者が、産褥熱で亡くなった患者の解剖検査中に、誤ってメスで指を傷つけてしまいます。
その後、この病理学者は産褥熱と似た症状で亡くなってしまいました。
そこでゼンメルワイスは
遺体から、目に見えない微粒子が侵入したのではないか
という仮説をたてます。
この仮説と2つの産科を関連づけたときに、第1産科の解剖による「手についた微粒子」が、妊婦に移されていると結論づけました。
現に第2産科の見習いの助産師は、解剖には関わっていなかったのです。
ゼンメルワイスがとった解決策”手洗い”
ゼンメルワイスは解決策として「手を洗う」ことを呼びかけました。
解剖室で仕事をしたあとに妊婦に触れる場合は、次亜塩素酸カルシウムを使い、手指の消毒を提示しました。
解剖台の臭いを消すために塩素消毒を行っていたことから、次亜塩素酸カルシウムが微粒子の毒を消す働きがあると考えたのです。
劇的に死亡率が低下しました。
そして1848年には解剖でも手洗い消毒が始まると、死亡率0%という月もあったのです。
ここが感染予防のための手洗いの発見でした。
現在では信じられないことですが、ゼンメルワイスが手洗いや手指消毒を発明するまで、医者でさえ、手洗いや手指消毒をほとんどしていなかったのです。
ゼンメルワイスのその後
ゼンメルワイスの、手洗いや手指消毒に対する医者たちの反応は、非常に悪いものでした。
政治的理由で病院を追われたゼンメルワイスは、その後医師会からも見放され、故郷のブダペストに帰りました。
その後、肺血症により42歳で死去しました。
20年後にフランスのパスツールが、病気と細菌の関係を突き止めました。
パスツールの成功の裏には、ゼンメルワイスの理論が裏付けられています。
ゼンメルワイスは殺菌消毒法のパイオニアとして、今でもなお評価されています。
新型コロナウイルスと手洗い
現在世界中で猛威を振る舞う新型コロナウイルスを予防する手洗いは、170年前のゼンメルワイスの発見によってできています。
ゼンメルワイスはそんな偉大な発見をしたにも関わらず、人々から疎外され、悲しい人生の幕を閉じました。
しかし、ゼンメルワイスの手洗い提唱は人類に大きく称えられています。
2020年3月20日のGoogleのトップページには
Recognizing Ignaz Semmelweis and Handwashing
(センメルヴェイス・イグナーツの手洗い提唱を称えて)
Google
に変更されました。
そのロゴ部分をクリックすると、ゼンメルワイスが時間を図りながら、しっかりと手を洗っているかチェックしているアニメーションが施されました。
同時公開された動画には、WHOのテドロス事務局長が手洗いの仕方を教えるといった特設ページも設けられました。
ゼンメルワイスに関する著書
手洗いの疫学とゼンメルワイスの闘い
歴史上初めて手洗い・消毒の重要性を訴え、接触感染による産褥熱の死から若い母親たちを守った感染防護の父・ゼンメルワイス―。その悲劇の生涯と研究のあり方を疫学的観点から検証し、事実に基づく科学的視点の重要性を説く!
「BOOK著者紹介情報」より
まんが医学の歴史
ゼンメルワイスの他にも、解剖学の始まりのような古代医学から、クローン羊の誕生といった現代医学まで、漫画でわかりやすく描かれています。
現在の発達した医学には、先人たちの汗と涙の苦悩の日々や、周りから何を言われようと、自分の意思を貫き通した医学者たちの歴史を知ることができます。
決してマネしないでください 第2巻
『日本人の知らない日本語』の蛇蔵による、週刊コミック誌「モーニング」連載の「大人が読める学習マンガ」!! 理系大学を舞台に、今日も最高の頭脳を使った、最高におバカな実験が繰り広げられる。例えば、「ハードディスクのデータを完全に消去する」「安いワインを○○○○で高級風にする」「『1メートルの長さ』がどうやって決まったのか調べる」などなど。描き下ろし盛りだくさんの第2巻!!
amazon 商品紹介より引用
【まとめ】
感染予防の手洗いは、ゼンメルワイスの努力と苦悩の人生によって発見されました。
その手洗いの歴史を知ると、いかに手洗いが大切かを感じます。
ゼンメルワイスの死を無駄にしないためにも、こまめな手洗いに心がけましょう。
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